映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【マイ・バック・ページ】ネタバレ感想/原作に近いけどある意味真逆!


マイ・バック・ページ [Blu-ray]

基本情報

公開年:2011年

監督:山下敦弘(他監督作品:リンダリンダリンダ オーバー・フェンス)

脚本:向井康介

キャスト:妻夫木聡(沢田雅巳/モデルは川本三郎)松山ケンイチ(梅山)忽那汐里(倉田眞子)古舘寛治(中平武弘/週刊東都記者で沢田の先輩)

上映時間:141分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

1969年。暴力で世界を変えられると信じた若者たちがいた時代。東大安田講堂事件を契機に、全共闘運動が急激に失速していった時代。東都新聞社で「週刊東都」の記者として働く沢田雅巳は、取材対象である当事者たちの志を共有したいという感情と、ジャーナリストたるものに必要とされる客観性の狭間で葛藤する日々を送っていた。ある日、沢田は先輩記者の中平から、指名手配中の東大全共闘議長・唐谷を日比谷で開催される全共闘結成大会まで連れてくる、という任を受ける。「失敗すれば逃走援助で、自分も罪に問われる」明らかにジャーナリズムの境界線を越えていることを自覚しながら唐谷を送り届けた沢田は、集会の狂騒に包まれて胸を熱くする。

1970年。日本大学の教室では、“哲学芸術思潮研究会”と称するサークルの討論会が行われていた。 壇上で気炎をあげる片桐優(梅山)と、その横で片桐を支持する柴山。「行動しない組織はナンセンスだ。俺は間違ってない。俺は一人でもやるぞ!」正論なのか? 詭弁なのか?片桐が発する奇妙なエネルギーに、傍聴していた学生の重子と七重は、思わず惹きつけられていた。

感想

原作は真逆だった!

オフビート的と評される山下敦弘監督作品は好きでして、一本目取り上げるなら「もらとりあむタマ子」と迷った末にこちらににしました。(特に意味はありませぬ)

「マイ・バック・ページ」は川本三郎氏のエッセイ?(回想録というんでしょうか)を原作にした作品です。まったくもって不勉強で申し訳ないのですが川本三郎氏については「重すぎず軽すぎずイイ感じに映画評などを書かれる洒落た文化人」くらいの認識しかなく、こんな重い過去があったことに驚き原作本も読みました。んで「これ映画と真逆やん!」と思ったのです。

映画の最後までのストーリーざっくり言いますと(ネタバレです!)学生運動も終焉しつつある時代、沢田(=川本氏)は東都新聞社に入社し「東都ジャーナル」に配属されます。(モデルは朝日新聞社、朝日ジャーナル)梅山という日大の過激派と出会い共鳴、梅山が自衛官を殺害するテロ行為を起こした際、「彼は思想犯だから」と庇って証拠隠滅容疑で逮捕され有罪判決を受けます。当然新聞社はクビです。沢田=川本氏はこの後編集プロダクションに拾われ、映画評などを書き始めたというわけ。ストーリーは実際にあった出来事とほぼ同じです。

ではどこが「原作と真逆」と思ったかといえば…

原作は1988年に出版されたものでこの事件から17年が経過しています。読んで驚いたのは著作の中で川本氏は未だ「彼は思想犯である(つまり、彼も自分も罰されるべきではない)」と言いたげだったことでした。

しかし映画の中では沢田は自分の行いを悔いているんですよね。最後はライターとなった沢田が出てきますが、居酒屋で一人おいおいと泣くんです。

映画の中でも警察官に諭されますが、思想がどうであれ「罪のない自衛官が殺された」「その殺人に加担した」ことに変わりなく、政治の季節から遠く離れた現在の感覚からすれば「何いうとんねん」なこの原作。それをこういう風に落とし込んだのか!と改めてこの映画の凄さを思い知りました。制作するにあたり、監督と脚本家は川本氏に直接会って話を聞いたといいます。1988年から川本氏に気持ちの変化があったのかはわかりません。

妻夫木くんはいつも泣いている

そんなこの作品のキモとなる最後の妻夫木聡の涙。長いです。その泣きっぶりがとてもいいのです。ふと気づいたのですが妻夫木くんっていっつも泣いてないか?

ワタシが思い出すだけでも「悪人」「愚行録」「ジョゼと虎と魚たち(これはちゃんと観てないんすけど)」。検索したら「涙そうそう」では鼻を摘んで泣くというテクニカルな技を見せながらも感動的な場面に仕上げているのだとか!(職人!)テレビドラマでは…どうなんだろ?

もう覚えている人も少ないと思いますが妻夫木くんといえば「東京ストリートニュース」という雑誌で高校生読モやってたチャラめな兄ちゃんでした。そんな子がよくもここまで一流の俳優に…と親戚のおばちゃんヅラをして涙しています。

「ある男」もとても良かったので、この記事貼っておきますね。(妻夫木くんの話ひとつもしてませんが)

kyoroko.com

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