映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【にっぽん昆虫記】感想/土の匂いがするオンナ


NIKKATSU COLLECTION にっぽん昆虫記 [DVD]

基本情報

公開年:1963年

監督:今村昌平(他監督作品:楢山節考 黒い雨 うなぎ)

脚本:今村昌平 長谷部慶次

キャスト:左幸子(松木とめ)北村和夫(松木忠次/とめの実父)長門裕之(松波守男 )吉村実子(松木信子/とめの娘)

上映時間:123分

あらすじ

<以下、日活公式サイトより引用>

大正7年、東北の農家で父・忠次と母・えんの娘として生まれたとめは、23歳で製紙工場で働くようになり、やがて地主の本田家に“足入れ婚”させられる。そこで娘の信子を生むが、逃げ出すように家出する。上京したとめは、米軍基地ハウスのメイドや売春宿で働くうちに次第に客を取るように。やがて、コールガール組織のマダムとなって田舎から娘の信子を呼び寄せるが、売春罪で逮捕されてしまう。刑期を終え、とめが出所すると、信子は母親のパトロンだった男の情婦になっていた……。

感想のようなもの

NHK「世界サブカルチャー史」を観ましてね…

また急に古い映画のことを書こうと思ったのは録画していたNHK「世界サブカルチャー史 欲望の系譜 日本 逆説の60-90s 第1回」の中にこの作品が出てきて、ちょっとびっくりしたことがあったからです。

www.nhk.jp

番組では大島渚、篠田正浩ら60年代に新しい波を起こした映画監督を紹介、加賀まりこが証言者としてインタビューに応じていました。今村昌平は50年代から活躍していた監督で「にっぽん昆虫記」の公開は1963年。東京オリンピックの前年です。ワタシが何に驚いたかって、ナレーションで「この年の観客動員数1位を記録した」と言っていたこと。この作品「性」が真正面から取り上げられており、簡単に言えば「大人が観るもの」なんすわ。ちなみにここ3年の日本の観客動員数1位映画を挙げてみると、2020年「鬼滅の刃 無限列車編」・2021年「劇場版 呪術廻戦 0」・2022年「ONE PIECE FILM RED」となっています。子供含めご家族で安心して見られるアニメ作品ですやね。いや、いいとか悪いとかじゃなく、大人しか観られない映画が観客動員数1位なんて、映画にそんな時代があったんだあということにびっくりしたんですよね。

左幸子33歳とは思えぬ熟しっぷり!

「にっぽん昆虫記」、ワタシはNetflixで観たのですが左幸子演じる「とめ」の生き方に衝撃を受けました。終戦の日の様子や戦後の混乱、その後「政治の季節」に狂乱する若者たちなど時代背景もちょいちょい出てくるのですが、とめにとってはすべてどうでもいいことです。まさに背景に過ぎない。自らの欲望に妥協せず身体ごと人生を切り開いていく様は、肉体が迫ってくるような撮り方もあいまって土の匂いが立ち込めるような迫力です。あとエロい。単なるアップとも違う「カメラに肉を見せつける感じ」っていうんでしょうか…。こういう土臭い女性は怖いです、絡め取られるような気がして。この時左幸子33歳ですが、ねちょっとした四十路女の雰囲気出してます。ちなみに彼女はこの作品でベルリン国際映画賞で日本人初の主演女優賞を受賞。外国人が観ても圧倒のエロさっつうことですよね?!

なんでもないのに圧巻のラスト

そしてラスト、とめが山道を歩くなんでもないようなショットで終わるのも良い。ああ、この人ずっとこんなでこぼこ道を歩いてきたしこれからも歩いていくんだな、苦とも思わずに…と思わせる余韻。い、今村昌平すげえ…と圧倒されたわけですが、今回、当時多くの日本人がこの作品を観ていたという事実にも圧倒されました。当時の人に感想を聞いてみたい。「これは自分たちの姿だ!」と思ったのか、それとも「土着的ユーモアのある作品ですね」みたいに客観視したのでしょうか…?

さて、同じく60年代の今村昌平監督作品「神々の深き欲望」も面白そうなだなと思ってマイリストに入れたのですが、いや元気がある時にしか観れないよなコレ…と思って未だ観られておりません。

人生変わった度

★★★★★★

逞しすぎる女の粘り気にお腹いっぱい

(たぶん今でも)Netflixで観られます。Amazonプライムビデオでも観られます〜

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アマプラにもあったぞ「神々の深き欲望」。沖縄を舞台にねっちょりと生と性を描いているらしいぞ…(ゴクリ)

神々の深き欲望

神々の深き欲望

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「にっぽん昆虫記」同様東北が舞台のこちらもすごいという話。

赤い殺意

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