不穏度
1977年版→75 2018年版→55(100を満点として)
ダリオ・アルジェントの芸術性を理解できなくてすみません。
基本情報
<1977年版>
監督:ダリオ・アルジェント(「インフェルノ」「フェノミナ」)
キャスト:ジェシカ・ハーパー(スージー・バニヨン)アリダ・ヴァリ(ミス・タナー)ジョーン・ベネット(ブランク夫人)
上映時間:99分
<2018年(リメイク)版>
監督:ルカ・グァダニーノ(他監督作品:「君の名前で僕を呼んで」)
ダコタ・ジョンソン(スージー・バニヨン)ティルダ・スウィントン(マダム・ブラン)クロエ・グレース・モレッツ(パトリシア)
上映時間:152分
なんとなくホラーが観たいな、と思いましてね。Amazonプライム会員特典の中で探したら「サスペリア」がありました。公開当時「決して一人では見ないで下さい」という秀逸すぎるコピーが話題になりまして、怯えた少女が映る全体的に赤いビジュアルのポスターも怖いし当時子供だったワタシには大変なトラウマになりました。でももう大人だから観られる!大丈夫!と思ってポチッとしたところ…
1977年版「サスペリア」感想
感想は「え?」です。ぜんぜん怖くないです。確かにウジ虫がうようよとか、ほとばしる鮮血とかショッキングな映像はありますが、いくら70年代だとしても血の色が明るい赤すぎて本物感がないんですわ。
ストーリーはいたって単純です。アメリカからドイツの名門バレエ学校にやってきたスージー。校内の寮をあてがわれ友達もできて順風満帆と思いきや、奇妙なことが次々起きる。実はこの学校は魔女が運営しており秘密の部屋で呪いの儀式をしていた、というもの。ちなみに77年当時のホラーもので「魔女」の登場は新しかったらしいです。でもこのストーリー自体に「怖さ」がないんですよね。怖くなりそうな要素、例えば「思春期の少女ばかりの寮生活」(怪現象を起こすのはだいたい思春期の少女です)とか「学校の秘密を話してくれた友人が実は精神科医にかかっていた」(学校がおかしいのではなく友人の妄想だったのでは?という不安をかきたてる)などはあるんです。しかし監督はそっちには振らず、ビジュアル面での怖さ=美しさを追求します。照明は赤、青、黄色。いきなり出てくる自動ドアの開閉部のアップや、どぎつい色彩の校内、盲目のピアニストが犬に喉を食い破られる時の、誰もいない夜の広場。「恐怖」と「美」の近さを知っておりそれをとことん追求したいのでしょう。作家性の強さはすごいし、評価が高いのもわかります。が、しかし「イタリアンホラーの傑作」みたいに言われるのはどうかな?と。だって怖くないんだもん。公開当時観た大人たちは怖かったんだろうか?聞いてみたいです。
うーむ、リメイク版では怖くなってるといいな。そっちも観てみるか…。
2018年版(リメイク)「サスペリア」感想
感想は「む?」です。ぜんぜん怖くありません。ストーリーが複雑になっていました。舞台は77年のベルリン。西と東に別れていた頃ですね。アメリカから来たスージーはメノナイト(19世紀の暮らしを守るキリスト教の一派)の出身。バレエ団はクラシックではなくモダンバレエに変わっています。さらにサイドストーリーに大戦中に妻を強制収容所で亡くしたらしき精神科医のおじいさんが絡み、ハイジャックがどうこう…。たぶん宗教的歴史的背景がわからないと理解できない話が挟まってきます。最後「呪いのダンス」で一つに集約されるのですがもう何が何やら…。あ、ティルダ様の魔女役は良かったっす。あとタナー先生役の人が小室佳代さんに似てるというどうでも良いことに目が釘付けになってしまいました。
まとめてみると
どちらも監督の作家性が強く芸術的な作品です。決してつまらなくはないです。
77年のオリジナルは99分と短いため、こだわりの映像美に観入っている間に終わってしまいます。
リメイク版は長めですがダンスシーンに力を入れておりこちらはこちらで見応えがあります。「ダンス=呪術」がカットバックで表現されるシーンはすごい。
だが!残念なことにどっちも怖くないんですよ。怖い映画を期待して見たのですっかり肩透かしにあってしまいました。
それからリメイク版のほう、こちらのサイトに解説がありまして、はああ〜勉強になりました!「メノナイトで育ったスージー」は「純粋培養された娘」を表すためのものだと思いましたがそれだけではなかったのですね…。
両方ともAmazonプライムビデオで見られます〜