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【アナザー・カントリー】感想と実話解説/耽美的な、あまりに耽美的な

不穏度

35(100を満点として)

長すぎる青春の影

基本情報

公開年:1984年

監督&脚本:   マレク・カニエフスカ

キャスト:ルパート・エヴェレット(ガイ・ベネット)コリン・ファース(トミー・ジャッド)ケイリー・エルウィス(ジェームズ・ハーコート)

上映時間:92分

あらすじ

1983年のモスクワ。車椅子の老人がインタビューに応じている。老人は祖国イギリスを裏切りソ連に亡命したスパイ、ガイ・ベネット。ガイはパブリック・スクール時代のことを話し出す。1932年、英名門パブリック・スクールの優秀な寮生だったガイ。親友ジャドは共産主義者。ガイは別の寮に暮らす美少年ハーコートに心を奪われ、禁じられた同性愛にのめり込んでいく。

感想(ネタバレあり)

またしても段ボールの中から発掘したパンフレットからご紹介。耽美的という言葉がピッタリの作品「アナザー・カントリー」。観たのは公開当時ではなく数年たってからのことだと思いますが、当時今でいう「腐女子」のケがある女子はみんなチェックしているという映画でした。(ハイ、ワタシもその一人ですッ)なんといっても出てくる男子が皆美形。そしておしゃれな着崩しファッション。イギリスってカッコいいし、パブリックスクールってエリート校なんでしょ?こんなん10代女子はうっとりしかしませんよね?!…と、当時の甘酸っぱい気持ちを反芻しつつパンフレットを眺めていて思い出したのは「雰囲気はいいけどストーリーにいまいち納得できなかった」こと。腐友達のジュンコちゃん(「アラビアのロレンス」回にも登場)とも話しました。「あれだけで生まれ育った国を裏切って敵国ソ連のスパイになるもんかねえ?」と。

主人公のガイは校内でも「出来る」エリート。学校を支配する自治会のメンバーに選ばれれば将来の出世も約束されるためメンバー入りを目指しています。しかし寮内で禁じられている同性愛者であったため落選。落胆して「共産主義も悪くないな」となります。たかだか校内のエリートコースを外れただけで「この国はダメだ」ってなるってこと?!親友は共産主義にハマってたけどガイは全然興味なさそうにしてたのに?!と当時のワタシは思ったのです。

んで、改めていろいろと調べてみましたら…

ガイ・ベネットのモデルとなった人物はガイ・バージェスというスパイ。BBC勤務、外務省勤務を経てソ連に亡命しています。そのガイも含めた「ケンブリッジ・ファイブ」というスパイ網がありまして、5人全員がケンブリッジ卒のエリート。なぜ彼らがソ連に転んだかといえば、まだ同性愛が犯罪とみなされていた時代、その弱みをソ連に握られたのだとか。同性のハニートラップを仕掛けられ現場写真で脅されるというパターンも多かったそうです。なるほど…。映画では「共産主義もいいな」と言ってから後のことは描かれていないため「え?それだけで?」となったのですね。

そしてパンフレットを読んでいて「へえ〜」と思ったことがもう一つ、評論家倉田保雄先生の寄稿にありました。

ソ連に転んだエリートスパイの多くがパブリック・スクール出身で、美しいパブリックスクールアクセントの英語(クイーンズイングリッシュ)を話すのだそう。ガイを演じるルパート・エヴェレットも完璧にこの英語をしゃべっています。だから彼が最後に言う「アイ・ミス・クリケット」という言葉は、単に「クリケットが懐かしい」という意味ではなく「英国には帰らないが英国人としてここで死ぬつもりだ」というメッセージなのだ、と。

ちなみにガイ・バージェスは亡命後英国の土を踏むことなくモスクワでアルコール依存症で亡くなり、ガイを演じたルパート・エヴェレットは80年代後半ゲイであることをカミングアウトして一時期仕事を失っています。

こんなことを知ると、ガイと恋人が月夜にボートで逢引きをする美しいシーンがますます切なくなりますね…。

お耽美でステキ〜などと能天気にこの作品を語っていた女子高生の自分をぶん殴りたい気持ちになりましたが、初めて観る方は「アナザー・カントリー」の美しい映像世界に浸っていただいたらそれで十分かと思います。

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アナザー・カントリー(字幕版)

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腐友達のジュンコちゃんが鋭い指摘をした「アラビアのロレンス」はこちら。

kyoroko.com