映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【フェイブルマンズ】ネタバレ感想と考察/スピルバーグの生き地獄とは?


フェイブルマンズ ブルーレイ+DVD [Blu-ray]

基本情報

公開年:2023年

監督:スティーブン・スピルバーグ

脚本:スティーヴン・スピルバーグ トニー・クシュナー

キャスト:ガブリエル・ラベル(サミー・フェイブルマン ※スティーヴン・スピルバーグ本人をモデルとしている。)ミシェル・ウィリアムズ -(ミッツィ・フェイブルマン サミーの母親)ポール・ダノ (バート・フェイブルマン サミーの父親)セス・ローゲン (ベニー 父親の親友)

上映時間:151分

あらすじ

<以下、公式サイトより>

初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年は8ミリカメラを手に家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作する。そんなサミーを芸術家の母が応援するが、科学者の父は不真面目な趣味だと考えていた。そんな中、一家は西部へと引っ越し、そこでの様々な出来事がサミーの未来を変えていく…

評価

遅ればせながら観てきました「フェイブルマンズ」。ワタシ的評価は「良かった!」です。すごく笑えるとか泣けるとか染み入るとかではないので、退屈だと感じる人もいるかも知れないなと思いつつ。一言で言うなら「あの『風立ちぬ』を超えるくらいの地獄絵図」です。勢いでばーっと感想と考察(?)的なことを書きますが、一応加えておくと「フェイブルマンズ」というのは「フェイブルマン家の人々」的な意味で、スピルバーグを生んだ家族のことです。それとびっくりすることにデイヴィッド・リンチ監督がジョン・フォード監督の役で出ています。(ややこしい)

ここから先はネタバレしています。ご注意下さい!

感想と考察のようなもの

想像以上の地獄絵図でした…

観た方ならもう何のことか分かると思います。スピルバーグ(サミー)のお母さん、浮気します。しかもお父さんの親友と。さらにしかも。サミーだけがそれに気がつくんです。何故か?フィルムに映っちゃってんですよ、いちゃいちゃしているところが。浮気相手のベニーはお父さんの親友として居候の如くいつも一緒にいます。家族キャンプにも当然のようについてきます。サミーと妹たちは「ベニーおじさん」としてすっかり懐いています。サミーはキャンプの様子をお得意の8ミリで押さえます。その時は気づいていなかったのですが、編集の時に気づいちゃうんです。バレてないと思っていちゃついている姿が!いえ、さすがにチューしたりはしてませんよ?でもね、ベニーを見るお母さんの目、ベニーに向ける笑顔。それらで分かってしまうんです。

きっつー。母親の浮気に気づくって。

しかしそれ以上の地獄はここからです。サミーはこのフィルムをズタズタに切って「こんな嫌なものが撮れてしまった!もう映像は撮らない!」ってなっても良いはずなのに、そうはならなかったのです。それどころか、おそらくイチャイチャシーンを編集してまとめたんでしょう。そのフィルムをお母さんに見せるっていうね…。この時15歳とか16歳。もうすでに芸術家の業みたいなものが芽生えちゃってます。怖いー怖いよー。

映像に映った自分を観るということは自分を第三者的に観ることです。お母さんはこの映像の自分を見て「ベニーといる時のアタシこんな顔してたのね…。アタシやっぱりベニーに恋してるんだわ」と再確認したことでしょう。つまりこれが実際の離婚の引き金になったとも言えるんですよ。あわわわ…

ところでこの作品、自伝ではなくあくまで自伝「的」作品となっています。つまりまったくの実話ではない、と。特にこのエピソードは実話じゃないことを祈るよ…。

なぜいじめっ子をヒーローにしたのか?

そんなこんなで家族は壊れかけつつも、エンジニアとして天才的な才能があった父親はIBMにヘッドハンティングされ、一家でカリフォルニアに引っ越すことに。お母さん、ベニーとは一旦ここでお別れ。そしてカリフォルニアといえば「青いバカ」のいるところ。背が小さくてスポーツは苦手、西海岸では珍しいユダヤ人ということでサミーはハイスクールでひどいいじめに会います。いじめグループのメインは見栄えのよいリーダーと、いかにもスネ夫っぽい見た目の手下。(以降「リーダー」と「手下」とします)。

さて、そのハイスクール生活も終盤を迎え、サミーは「卒業生たちが1日ビーチで遊ぶ日」にカメラを回し、卒業記念フィルムを作ります。そのフィルムがプロムで上映されると、いじめっ子リーダーはその場で大人気になります。なぜかといえば、サミーがリーダーを主役にしてカッコ良く編集したからです。一方の手下は女の子に振られる場面を使ったり、砂浜でコケる場面を使ったりと3枚目に仕立てあげます。手下は怒ります。当然ですよね、勝手に撮影されて恥ずかしい場面だけ使われたんですから。そして面白いことにリーダーもサミーに怒るのです。「お前、なんでフィルムの中で俺をあんな風に見せたんだ。あんなのは俺じゃない。」と。〜イエイ、やっぱオレ様目立っちまうから、ヒーローになっちまったぜエヘヘ…〜とならないあたり、どうやらこのリーダー、意外と頭が良い。これに対してサミーは「5分だけでも友達になりたかったんだ」と返します。が、果たしてそれ本当かな?とワタシは思ってしまいました。サミーがリーダーを5分間の記念ビデオで主役に据えたのは見た目がヒーローっぽくて格好良かったからってだけではないでしょうか。同じく見た目がスネ夫っぽい手下は3枚目になってもらったんです勝手に。

サミーはフィルムに焼き付いたお母さんの笑顔に、目線に「ベニーに恋をしている」という真実を見てしまいました。真実なんか映したっていいことなんか何もない。この時からサミーは「虚」を映すほうに全振りしたのでは?と。

リーダーの真実の姿なんてどうだっていいんです。ヒーローっぽく写れば。見た目のいいやつが俺らのヒーローだったらみんなが楽しいし。怖いー怖いよー。

地平線の話のこと

最後はサミーが大学を中退しどうにか映像業界に潜り込んだところで終わりますが、ラストをビシッと決めるのがジョン・フォード監督の存在。(デイヴィッド・リンチが演ってます!)ジョン・フォードはサミーに向かって「地平線は画面の上か下にあれば面白い画になるんだよ!真ん中だとつまんない画になるんだよ!」と言います。それを聞いたサミーは嬉しそうな顔をします。これは「憧れの巨匠に会えた」とか「素晴らしい訓示を得た」嬉しさではないでしょう。「やっと話が通じる人と出会えた」ではないでしょうか。映像ってカメラをどこにおくか、そしてどう向けるか、もうそれなんですよね。サミーはずっと前からそれを考えていたんだろうし、地平線の話は「僕の頭の中をコンパクトに言語化してくれた!!みたいなものだったのでは?なんて思いました。

全体的に「作家の業」みたいなものがチラチラと見え隠れする恐ろしい映画でしたが最後はホッとしました。映画に救われた人が作った映画にまた救われる人がいる。こうやって世界は回っていくんですねえ…。

ばばばーっと書いてしまいましたが、パンフレット読んだらまた落ち着いて第二弾書くかもです。

人生変わった度

★★★★★

映画に取り憑かれた人間は幸福かそれとも不幸か?

アマゾンプライムビデオで観られます。

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