映画ごときで人生は変わらない

映画大好き中年主婦KYOROKOの感想と考察が入り混じるレビュー。うっすらネタバレあり。週1〜2回更新中!

【エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス】ネタバレほぼなし感想/つまらなくはないのだが…

gaga.ne.jp

基本情報

公開年:2022年

脚本&監督:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート(他監督作品:スイス・アーミー・マン)

キャスト:ミシェール・ヨー(エヴリン) ジョナサン・キー/キー・ホイ・クァン(エヴリンの夫ウェイモンド・ワン) ステファニー・スー(エヴリンとウェイモンドの娘のジョイ・ワン) ジェームズ・ホン(エヴリンの父ゴンゴン)

上映時間:139分

あらすじ

<以下、公式サイトより引用>

経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、なんと、巨悪の正体は娘のジョイだった…!

長々としたこのタイトル、Google先生に翻訳してもらいましたら、「すべてを 一度に どこでも」。「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」、観てきました。率直な感想は「期待してたほどじゃなかった…」です。アカデミー賞最多10部門11ノミネートっていうからさあ…。(追記:結局、作品賞はじめ7部門で受賞しました)とはいえ、面白いな〜という点だってもちろんあります。観るべきところがない映画なんてない!あとこの作品コメディなんで、何度か声出して笑いましたよ!オゲレツな笑でしたけど!

というわけで、「面白かった点」と「微妙〜って思った点」それぞれまとめてみました。

ここからネタバレしているのでご注意を!

面白かった点

名作映画へのオマージュがびっしり!

「マトリックス」「レミーのおいしいレストラン」「2001年宇宙の旅」「タイタニック」などなどざっと挙げるだけで「あっ!あの映画のあのシーン」だという場面がいっぱい。映画ファンならそれだけで楽しいです。一つ、「靴の匂いをかがせると目を覚ます」というシーンがあるんですけどそれって「クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲」へのオマージュでいいんですかね?公式サイトのインタビューによれば監督の2人(ダニエルズ)は日本のアニメ大好きだそう。けどまあ誰もが考えそうなアイデアだから違うか…。

母と娘のいい話です

ストーリーの骨子は母と年頃の娘のぶつかり合いです。親子喧嘩を宇宙規模にした、と言ってもいいでしょう。父親やおじいちゃんも出てきます。つまり家族の話。あっちこっちに飛びますが最終的には「いい話」に収まります。たぶん娘がいる人が見たら泣くんだろうな…。

「マトリックス レザレクションズ」へのアンサー?!

突然話は飛びますが、2021年に公開された「マトリックス レザレクションズ」について。ストーリーは端折りますが、この作品制作陣が「マトリックスから20年たったけど映画界はこれ以上の新しい映像表現見つけられていませんよね?猫動画作ってればお金になるからって妥協してんじゃねえぞ?」という厳しいメッセージを叩きつけた…とワタシは解釈しています。

そして「エブエブ」はそれに対する答えの一つを打ち出したのでは?と。

「マトリックス」の画期的なところは映像はもちろんですが、「主人公だけ死なない」「主人公だけ異様に強い」というこれまであったご都合主義に対し「主人公は〇〇だから強い」という理由づけをしっかりと明記したことにあると思います。我々が現実だと思っている世界は実は幻覚で、幻覚だから弾は避けられるし、空も飛べる、と。「エブエブ」の主人公が強いのは「『マルチバース』という枝分かれした別世界でカンフーをやっていたから強い」のです。映像の斬新さではマトリックスに敵いませんが、「新しい『理由』を発明した」ことが一つのアンサーとなったのではと思います。(…なんて思ったけど制作時期かぶっているから違うなきっと…。あと「TENET」もあったしな…ごめん、長い独り言でしたわい)

微妙〜と思った点

スケール感の小ささ

今作に出てくる「マルチバース」とは、誰もが一度は考える「あの時別の選択をしていたら今ごろは…」という世界が物理的に存在しているという考え方です。どの平行世界にも「ワタシ」はいて、生活しています。ということは、その世界は無限に近いほどたくさんありますよね?でも映画の中の出てくる「枝分かれ世界」が少ない。少なすぎる!もっといろいろ見たかった!それと、どの世界も「画が狭い」んですよ。奥行きを感じさせる画はあの石のシーンくらいか。なんかスケール小さいな、という印象。正直、退屈に感じたのはこの「広い画が少ない」(逆にやたら顔のアップが多い)ことにつきるのではと思います。

中途半端な(!?)ADHD設定

追記です。ツイッターで流れてきたこの記事を読んでもう一つひっかかっていたことを思い出しました。ADHDの話です。

エヴリンにADHD的気質があることを説明するために、お父さんゴンゴンが「お前は子供の頃から何もなし遂げることができなかったからな」と言う場面があります。ADHDはあっちこっちに気を取られ、部屋は散らかりがち、頭の中も散らかりがちで一つのことをやり遂げることが難しい。

しかしこのセリフにワタシは「えっ?!どこが?!」と思ってしまいました。駆け落ちし裸一貫でアメリカに来てコインランドリーを経営。すごいですよね?!しかも年齢からすると長年やっているようです。面倒臭いことも多いだろうにやり続けているじゃあないですか。その間娘も育てているし。あと、あれだけの領収書をデタラメとはいえいちおうそれっぽく仕分けして期限までに税務署持っていけるってすごくないですか?!ぜんぜん「何も成し遂げてなくない」ですよ!!

ADHDという設定で観ている人に勇気を与えてくれようとしたようですが、毎年期日をすぎて確定申告してて、15年は続けようと思っていた会社経営を10年ちょっとで投げ出したワタシは余計に落ち込みましたよ!!

なんだろう、共感する/しないと言うのが映画の見方ではないんだけど、予備知識で「主人公はADHD設定で、それを肯定してくれる作品だ」と思って見るとイタイ目に合いますよ、と。

にはそんなこんなで面白くなくはないんだけど微妙…その自己肯定的なところがここが刺さった人は「感動的な作品」という感想になるようです。

そして3月13日に結果が決まるアカデミー賞でも主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞にノミネートされているように、役者陣は素晴らしいです。(追記:結局、上記の賞をすべて受賞)

優しさが顔に溢れているお父さん、助演男優賞のジョナサン・キー(キー・ホイ・クァン)に関してはこちらにも書いているのでどぞー。

kyoroko.com

人生変わった度

「『正しさ』なんて臆病者が作った小さな箱でしかない」(うろ覚え)というセリフは気に入りました。

2023/9/20 追記 アマプラで観られるようになっていました!400円なり

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