基本情報
公開年:2021年
監督:土井裕泰
キャスト:菅田将暉/麦 有村架純/絹 オダギリ ジョー/加持航平
上映時間:124分
あらすじ
<以下、映画「花束みたいな恋をした」公式サイトより引用>
東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った 山音麦(菅田将暉)と 八谷絹(有村架純)。好きな音楽や映画が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。近所にお気に入りのパン屋を見つけて、拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店しても、スマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが…。まばゆいほどの煌めきと、胸を締め付ける切なさに包まれた〈恋する月日のすべて〉を、唯一無二の言葉で紡ぐ忘れられない5年間。最高峰のスタッフとキャストが贈る、不滅のラブストーリー誕生!
──これはきっと、私たちの物語。
2023年の大河ドラマ「どうする家康」、あまり評判良くありませんでしたが、ワタシは毎週楽しみに見ていました。つまらない、という人の気持ちもわかりますが「大掛かりな長めのコント」を観ていると思えばすごく面白いですよ!
この大河ドラマに家康の妻役で出演している有村架純さんを観て「あ、『花束みたいな恋をした』についても考えをまとめておこう」と思った次第。しかし同作は公開当時大きな話題になり、かなり詳しい考察やら解説が溢れているので、ここでは「おばちゃんが観た感想」と「有村架純という役者について」述べることにします。
感想
おばちゃん目線で見てみると
いや〜、50歳で観られてよかったです。恋愛適齢期真っ盛りの時に観たらブッ刺さりすぎの満身創痍で映画館の座席から立てなかったことでしょう。そのくらいのリアリティですわ。実際ワタクシも「読んでいる本が同じだった」という理由で好きになった人と付き合い、アイタタタな別れを経験しています。趣味が合うからってそれがどうした、ですよ。(落ち着け)
ともかく、実にありがちな男女の出会いと別れ、しかも浮気やら予期せぬ妊娠やらの大ごとも起こらないのにとても面白く(時には痛く)見られる作品であります。
で、おばちゃん的には。
麦と絹の2人が部屋でオムライスやらパスタやらの綺麗に盛りつけられたごはんを食べているシーンがありますが、「それ、どっちが作ったの?」「あと片付けどっちがするかで喧嘩にならないの?」「男のほう、それで足りるの?大盛りじゃなくていいの?」などということを心配してしまいます。しかしそういう部分を「この恋愛を描く上では関係なし」と一切入れていないのが潔くて良いです。「恋愛映画」と一言に言っても何を描き、何を描かないかでだいぶ変わりますね…ってあたり前のこと言ったな。
有村架純という役者
同作は男女の良くある出会いと別れを描いた作品ですが、格差を描いた作品でもあります。麦は新潟の出身。東京にいて息をするだけでお金がかかる。父親(小林薫)の様子からしてもあまり裕福な家庭ではないでしょう。一方の絹の実家は東京郊外の一軒家。共働きの両親はセリフからすると広告代理店的な仕事をしています。それなりに実入りはいいはず。ここで問題になるのはお金があるかないかという直接的なことではなく、お金があるが(ないが)故に生まれる価値観の中で育った2人の格差です。
有村架純という役者さんについては「あまちゃん」の頃から感じていましたが、表層的な芝居がそのまま内面に通じていると思わせる役者さんだと思います。「顔では笑っているけど本当はこの人は辛いんだな」とか「楽しげにしているけど本当は虚しいんだろうな」とかの「本当は」の部分がなく「そのまんま」だと思わせる力。一言で言えば「素直」。
こういう感じ、ありそうでなかなかなくないですか?!雰囲気出そうとして中身のなさを露呈している「底が丸見えの底なし沼」的な輩よりずっといいですよ!
有村架純自身がそういう人なのかどうかはわかりませんが、この役者のこの「感じ」が、絹を演じるにあたりとても効いていると思います。
絹は「まったく悪意なく」裕福な家に生まれたことを当たり前だと思っているし、「まったく悪意なく」仕事って楽しく自己表現するもの、と思っています。麦がそうじゃないのは何故かを理解することはありません。そりゃあ別れるわな。
さて、有村架純さん30歳になられたそうですが、これからも「素直さ」を感じさせる役者であり続けるのか、どっかでぎゅい〜んと驚くほどひん曲がってしまっても面白いですね。これからも期待です。
「花束みたいな恋をした」はアマゾンプライムビデオで配信しています。