映画ごときで人生は変わらない 

不穏映画が大好物のアラフィフ女 感想と考察が入り混じる映画レビュー。不穏度を数値化しています

【0.5の男】感想(ちょいネタバレあり)/アイスをおごる松田龍平に泣けるほのぼのドラマ

 

※WOWOWで放映後、アマプラ、Netflixなどで配信している全5話のドラマです。

基本情報

放映年:2023年

監督:沖田修一 玉澤恭平

脚本:牧五百音 沖田修一

キャスト:松田龍平(立花雅治 / Q太郎)臼田あさ美(塩谷沙織)白鳥玉季(塩谷恵麻)加藤矢紘(塩谷蓮)篠原篤(塩谷健太)木場勝己(立花修)風吹ジュン(立花恵子)

上映時間:およそ60分×全5話

あらすじ

<以下アマプラの紹介文より引用>

古くなった実家を2世帯住宅に建て替えることにした立花家だが、ひきこもりの兄・雅治(松田龍平)の居住スペースが問題に。父・修(木場勝己)はこれを機に自立すればいいと言い、母・恵子(風吹ジュン)は無理をさせたくないと擁護する。一方、妹・沙織(臼田あさ美)は兄の部屋をなくして玄関を二つにしたいと自分勝手な主張を繰り出す。話し合いがまとまらない中、ハウスメーカーの川村(井之脇海)の説得によりなんとか「2.5世帯住宅」の建設に向けて歩み出す。そうして始まった新生活。ゲームの世界ではカリスマとあがめられている雅治だが、妹には「家事を手伝え」、中学生になるお年頃のめい・恵麻(白鳥玉季)には「キモい」と言われ、仕事をしていない“0.5”の存在に居場所はありそうになく……。

評価

南極料理人」や「さかなのこ」で知られる大好きな沖田修一監督作品とあって観たのですが、とても面白かったです!お馴染みのオフビート感は全5話でゆるゆる進むサイズにピッタリ。サブタイトルは「家族以外と話す」「電動自転車に乗る」「アイスをおごる」など。ああ、ものすごくゆっくりと誰かが変わっていく話なんだな〜って感じ。衝撃的なニュースも1週間後には忘れてしまう時代ですが、人が歩くスピードはそうそう変わるものではない…そんなことを思い出させてくれる作品です。

では以下、特に気に入った回などについてざっくり感想です〜。

感想

良すぎる子役

「2.5世帯住宅」ってのは実際に住宅メーカーが提案している住宅だそうで。(売れているのかは分かりませんが)。引きこもりの独り身、雅治(松田龍平)は0.5世帯の男です。半人前、ってことですね。言うまでもありませんが、ボサボサ頭にスエットでボーッと突っ立っている松田龍平は全身松田龍平って感じでとても良いです。

同居するのは両親と妹一家。

この妹一家に保育園男児がいるのですが、元気が良すぎるクソガキ具合がですね、びっくりするほどいいんですよ!園に行きたくないと毎朝大暴れ。「昆虫戦隊バグレンジャー」という戦隊モノにハマっており、何度も何度も見ては決めポーズを真似、主題歌&ダンスを繰り返す。付き合う保護者はクタクタです。

それにしても「架空の戦隊モノにハマる幼児」ってどう演出したのでしょう?まず「昆虫戦隊バグレンジャー」シリーズを本気で作り、その動画を数ヶ月かけて子役に見せ続けた…としか考えられないぞ?劇中劇であるバグレンジャーですが、子供は本当に放映していると思ってませんか?!

レビューにも書いたのですが(下にリンク貼っておきます)、沖田監督は「滝を見にいく」で、演技経験のない素人を主役に採用しています。ワークショップを繰り返して作り上げたという芝居は見事。役者一人一人と真剣に向き合った結果が映像に表れています。

今作の演出がどんなものだったかは分かりませんが、撮影当時おそらく4歳か5歳だった役者とも丁寧に向き合ったのだろうなと想像できます。それか子役の加藤矢紘さんがとんでもない天才か。

それから、思春期まっただ中のお姉ちゃん役の白鳥玉季さんもすごく良かった!自分でも制御できない苛立ちと反発が中一女子そのものです。

「アイスをおごる」の乱闘戦

さて、全5話のうち特に好きな回は第4話の「アイスをおごる」。監督は玉澤恭平さんという方で、「さかなのこ」、それからむちゃくちゃ良かったノワールもの「夜を走る」などで助監督をされています。

少しづつ外に出られるようになった雅治が過去のトラウマを精算し、姪の恵麻に初めてコンビニアイスをおごるという回。アイスを食べながらいつもの土手を歩く2人のシーンの長回しがとても良いです。アドリブのように自然ですが(おそらく)何度も推敲されたセリフなのではないでしょうか?

それとその後の、お隣さんちの家庭内暴力に巻き込まれる場面も良い。引きこもり(雅治のゲーム仲間)の高校生が家の外まで両親を追いかけて馬乗りになる…という、説明すると激しいバイオレンスシーンを想像してしまうシークエンスですが、これがなんとほのぼのと描かれています。カメラはほとんど動かず、フレームの中に次々と人が入ってくる演劇風の演出。寄ることもせず「なんか遠くで人が揉み合ってるなあ」みたいな。

もちろん、パトカーも救急車も来たのですから本人たちにとっては大きな出来事で、高校生はこの事件をきっかけに引きこもりを脱しようと決意します。

「人生は寄りで見ると悲劇だけど引いて見ると喜劇」という言葉そのもののようなこのシークエンスは、ドラマのハイライト。改めて誰のどんな人生をも肯定しようとしている作品なんだな、と思ってなんか泣けましたよ(いや、泣くようなシーンじゃないんですけど)。

2年後の雅治(松田龍平)を妄想すると…

いわゆる「日常系」である今作、ドラマは終わっても彼らの生活はいまでも続いているような気がします。んで、今(放映されたのが2023年なので、2年後の今2025年)の立花家の様子を妄想してみました。

ドラマの最後にコンビニでのバイトを始めた雅治。根が真面目ですから2年後も続いていると思います。オンラインゲームも続けており、こちらでもいくらか稼いでいるのかと。夢である保育士の資格も取れている可能性が高い。ただ9時〜17時で本格的に働くことはできないかもしれません。甥っ子の面倒もまだ必要だし、そろそろ介護が始まるからです。雅治のことを、両親が、妹家族があてにし始めることでしょう。ちょっと前まで「半人前」と蔑んでいたにもかかわらず。

シーズン2があるとしたら、雅治が家を出て「1世帯」になるか、このまま家族と共に「主夫」としてやっていくかの選択が、ドラマの大きな柱になるかも知れません。

確かに本人が辛ければ外に出られるようになった方がいいですが、立花家のように少々資産があるなら0.5でも充分だし、今作の最後のように家事をして子供たちの面倒を見ながらアルバイトまでできれば充分1人前なんですよね。経済的に自立していないからといってそれを一括りに「半人前」とは言えないのです。

「0.5」と言われがちな立場の人たちが尊重される世の中であって欲しい、なんてことも思いましたよ。

「0.5の男」はアマプラで観られます〜。

アマゾンプライムは30日間無料体験できます。ここから申し込みに飛べます〜。

沖田修一作品はどれも好きですが、レビューを書いた2作品置いておきますね。

「さかなのこ」はさかなクンの自伝の映画化。のんがさかなクンを演じています。当然のように良いですが、痺れたのはラスト。「グランブルー」へオマージュを重ね、孤高の才人の孤独を表現しています。

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自分でも信じられないほど泣いてしまった「滝を見にいく」。紅葉狩りツアーに乗り合わせたおばちゃん7人が山で迷う。おばちゃんに歴史あり。大切に大切に心の宝箱に入れておきたいような一本です。

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上述した「夜を走る」。故大杉漣氏が最後に企画した作品。孤独な男が弾みで人を殺してしまったら…?中盤から異様な展開を見せるノワールもの。観る人を選びそうですがワタシはとても好きです。

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